先に押さえたいこと
飛行時間の違いには、上空の風が大きく関係します。ただし、飛行経路、高度、空港の混雑や地上移動も影響するため、毎回同じ差になるわけではありません。予約画面を見ると、行きと帰りの時間が違う
往復の航空券を探していると、同じ路線でも行きと帰りで所要時間が違うことがあります。「帰りの飛行機だけ速く飛ぶの?」と思うかもしれません。
違いを生む代表的なものが、上空の風です。飛行機は空気の中を進むため、同じように飛んでいても、進む方向と風向きの組み合わせによって地上に対する速さが変わります。
空全体が動く「動く歩道」を想像してみる
空港の動く歩道を進む場面を想像すると、少し分かりやすくなります。歩道と同じ方向へ歩けば、床の上を普通に歩くより早く先へ進みます。反対方向へ歩けば、同じ歩き方でも目的地まで時間がかかります。
飛行機も、進行方向へ吹く追い風を受けると地上に対して速く進み、向かい風を受けると遅く進みます。飛行機そのものが急いだり、ゆっくり飛んだりしているという単純な違いではありません。
日本付近では、西から東へ流れる風がある
気象庁は、偏西風を西から東へ向かって吹く地球規模の風と説明しています。その中でも、上空約10キロメートル付近に現れる特に強い風の帯がジェット気流です。
このため日本国内では、東へ向かう便が追い風、西へ向かう便が向かい風の影響を受け、東向きの所要時間が短くなることがあります。JALの公式メディアでも、羽田―福岡線を例に、冬のジェット気流が往復の飛行時間に大きく影響した事例が紹介されています。
ただし、ジェット気流の位置や強さは日や季節によって変わります。すべての路線で東向きが速くなるわけではなく、予約画面の差がそのまま当日の差になるとも限りません。
PILOT'S VIEW|最短距離だけを飛ぶわけではない
飛行計画では、できるだけ強い追い風に乗ればよい、という一つの条件だけで経路や高度を決めるわけではありません。出発地、飛行経路、到着地、必要に応じた代替空港の気象を確認し、安全性、乗客の快適性、搭載燃料などを考えます。
強い風の近くでは揺れが予想されることもあり、航空交通や天候を避けるために、地図上の最短距離とは異なる経路を飛ぶ場合もあります。「少し遠回りに見える=運航がうまくいっていない」という意味ではありません。
大切なのは、最短時間だけを目指すことではなく、その日の条件に合う経路と高度を選び続けることです。実際の運航判断は、公開されている天気図だけで乗客が判定できるものではありません。
時刻表の「所要時間」は、空を飛ぶ時間だけではない
国土交通省は、航空機が駐機位置から動き始め、目的地で停止するまでを「運航時間(ブロック・タイム)」と説明しています。時刻表で見る出発から到着までには、滑走路へ向かう時間や、着陸後に駐機位置へ進む時間も含まれます。
使う滑走路、空港の混雑、航空交通、悪天候を避ける経路なども所要時間に関係します。そのため、往復の時間差をすべて風だけで説明することはできません。
次の旅で見てみよう
次に往復便を予約するときは、料金だけでなく、行きと帰りの所要時間も見比べてみてください。東西どちらへ向かう便か、旅行する季節はいつかを考えると、時刻表の数字から上空の風を想像できます。
飛行機の所要時間は、ただ待つ時間ではありません。その日の空と運航条件が表れた、旅の一部として眺めることができます。
- 同じ空港間でも、往路と復路の予定時間を比べる
- 「空を飛ぶ時間」と「出発から到着まで」を分けて考える
- 実際の到着時刻は、当日の航空会社案内で確認する
- 時間差だけから、安全性や揺れの強さを判断しない
次の旅を、もっと面白く。
飛行機や空港の背景を知ると、予約画面の数字や窓から見える景色も旅の一部になります。次の読みものも、一般の旅行者向けにやさしく紹介しています。
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